昨日『アキナ』というお笑いコンビの山名くんに誘われて、彼らの単独ライブに行ってきた。客席は超満員で、会場に笑い声が響き渡っていた。
アキナはボケの山名くん(@sausageyamana)、ツッコミの秋山くん(@Aki8ma_3)で構成されるコンビだ。主に関西で活躍している。
彼らはコントを主体としている。日本一のコント師を決める大会であるキングオブコントでは決勝に進出している。さらにコントだけではなく、漫才の実力もある。漫才師の頂点を決めるM−1という大会でも決勝に進出しているのだ。
僕は昔からアキナのネタが好きだ。とにかくコント師としての実力はとてつもない。発想、演技力、構成力、そのどのレベルも高い。穴がないとはこのことなのだろう。欠点が見当たらない。そしてアキナがどのお笑い芸人よりも優れている点が、子供ネタだ。子供を演じるネタをさせれば右に出るものはいない。
ネタ作り担当の山名はほぼ僕と同年齢だ。もうおじさんの域に足している。僕も子供が登場人物の小説を書くことが多々あるのだが、子供の気持ちになって書くのはかなり難しい。
10代後半や20代のキャラクターならば、比較的容易にかけるのだが、小学生後半や中学生の気持ちというのは大人になると次第に失われていくものだ。そのぼやけた気持ちに目を凝らしながら書くので、どうしても表現があいまいになる。的確に当時の気持ちを書けないのだ。
なのに山名は、まるで今自分が少年時代にいるかのようにその感情を表現できる。それは驚異的なことだ。
それに加えて、アキナの二人は子供を演ずるのがとにかく上手だ。特に秋山くんが図抜けている。声質、ふるまい、純朴さ。まるで子供を演じるために生まれてきたかと思うほど巧みだ。
彼が演ずると、子供の無邪気さ、残酷さ、そして独特の儚さまでもが舞台で浮かび上がってくる。アキナの代表的なネタに『とれへん』というのがある。これは秋山くんの持ち味を存分に生かしたネタだ。
山名はこれほど質の高いネタを書いているのだ。小説を書いてもきっと面白いに違いない。そう考えて、僕は山名に小説を書くように勧めていた。
ちょうどそのタイミングで、山名に短編を書いてほしいと依頼があった。はじめて小説を書くと言うことで、「浜口さんどんなの書いたらですかねえ」と山名が相談をしてきた。
僕は迷わず、「子供を主人公にした小説書いてみたら。めっちゃ読みたいわ」と答えた。これほど子供の気持ちを書くことに適した人間はいない。以前からそう思っていたからだ。
そこで山名は『かさぶた』という短編を書き上げた。中学生を主人公にした物語だ。思春期の何とも言えない感じが、如実に表現できている。さすが山名だ、と僕は感心した。
ピースの又吉さんが芸人としてはじめて芥川賞をとったことで話題になったが、次に芸人で芥川賞をとるのはこの山名ではないだろうか。
キングオブコント、M−1、そして芥川賞。アキナがこの前代未聞のトリプル制覇をする日は近いかもしれない。
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