サグラダファミリアの作り方

サグラダファミリアをご存知だろうか?

着工してから100年経過してもまた建設途中という世界遺産だ。

100年は長い。

0歳の赤子が百歳になる期間だ(そのまますぎるたとえ!)。

ガウディの頭の中にしか完成図はなかったとはいえ、

実際作っている方々からすれば、その期間はとてつもなく長い。

サグラダファミリアほどではないが、

僕もここ二年間ほどとある長編小説を執筆していた。

この小説を書くために作家になったといっても過言ではないほど、

気合を入れた作品だ。

何せ20歳のときから構想していたので構想20年だ。

去年ブログを再開したのだが

「やっぱりこの小説を書くことに集中しなければ」

とブログを中断してこの小説にかかりっきりになった。

ブログには申し訳ないが、こればっかりは致し方ない。

まるで都合のいい愛人のような扱いになっている。

ということで寝る時間以外はほぼこの小説に取り組んでいた。

だが最近になり、この小説完成までにはまだまだ時間がかかることがわかった。

もっともっと取材が必要だと編集者から指摘されたのだ。

こう告げられて、正直虚脱状態に陥った。

二年間、この小説完成だけを目標にやっていたのだ。

まさにあしたのジョーの『燃え尽きちまったよおっちゃん状態』である。

そのときふと、サグラダファミリアを建設中の方々のことを考えた。

彼らはどういう心理状態で、サグラダファミリアを建設しているのだろうか?

二十四時間サグラダファミリアのことだけを考え、

仕事に没頭しているのだろうか?

おそらくそうではないだろう。

仕事の時は集中するが、それ以外の時間はサグラダファミリアを忘れ、

しっかり息抜きをしているのだろう。

そして次の日になれば、またサグラダファミリアに向き合う。

そうしなければ、100年経っても完成しないものなど作れない。

長く継続して完成を目指すというのは、心に余裕がなければできない。

人間息を止めて泳ぎ続けることはできないのだ。

その息止め期間が、僕の場合は二年だったのかもしれない。

この小説を完成させるには余裕が必要だとわかった。

サグラダファミリアを作るように、気長に着々と作るためのゆとりが重要なのだと。

それに気づいてから少し楽になった。

そこでストップしていた他の小説の仕事もはじめ、

10ヶ月間やってなかったブログも再開します。

時々「ブログチェックしてるんですが、更新はもうされないんですか」

という声が耳に痛かったんですが、

誠に申し訳ありませんでした。

これからはちょくちょく更新しますので。

ということでブログ再開のお知らせでした。

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ABOUTこの記事をかいた人

作家です。放送作家もやってました。第5回ポプラ社小説大賞特別賞を受賞し、『アゲイン』でデビュー。『22年目の告白ー私が殺人犯ですー』は20万部を超えるベストセラーに。他に『宇宙にいちばん近い人』『シンマイ 』『廃校先生』『神様ドライブ』『くじら島のナミ』『貝社員 浅利軍平』などがある。お仕事(執筆、講演)の依頼は、お問い合わせ欄まで。