このSNS時代は『誰が興味あんねん』時代ではないのか?

『誰が興味あんねん』、というお笑い芸人のヤナギブソンさんのギャグがある。

ギブソンさんがプライベートなことを訊かれ、ある程度語った頃合いでハッと気づき、「誰が興味あんねん」と叫ぶのだ。

自分クラスの人気の芸人のプライベートに興味があるやつなんかいるか、というある種自虐が込められたギャグだ。

ネット時代、このSNS時代というのは言い換えれば『誰が興味あんねん』時代かもしれない。

SNSであらゆる人々から発信されている情報は、99、999パーセントは『誰が興味あんねん』情報だろう。もちろんそこにはこのブログも含まれている。

誰が興味あんねんフィルターをかければ、残るのはジャスティンビーバーと市川海老蔵のブログぐらいしか残らない可能性がある。

だが誰もが興味がない情報をもっとも欲している人がいる。

それが未来の人間だ。

磯田道史先生の『武士の家計簿』という本がある。

金沢藩士猪山家文書』という武家文書に精巧な家計簿が完全な形で遺されていたのだ。これであきらかにされていなかった当時の武士の暮らしぶりが詳細にわかった。

この本はヒットし、映画化もされた。

だが当時の人がこの家計簿を見ても、まさにギブソンさんの『誰が興味あんねん』状態だろう。誰も普通の武士の家計簿などに関心を持たない。

しかし数百年後の我々からすると、これほど興味深いものはない。

だから数百年後の未来の人々からすれば、今のSNSで書かれていることは貴重な情報なのだ。

武士という大枠ではなく、性別、年齢、職業、性格など細かく個別された情報が得られるのだ。

もし江戸時代にSNSがあったら、今の歴史学者は大喜びだろう。磯田先生が珍しい魚に出会ったさかなクン状態になることは容易に想像できる。

ふと「これ誰が見てるんだろう」と思って発信するSNSも後々必要となるということだ。

ということで、このブログも未来の磯田先生のためになると思って書き続けていきます。

 

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

ABOUTこの記事をかいた人

作家です。放送作家もやってました。第5回ポプラ社小説大賞特別賞を受賞し、『アゲイン』でデビュー。『22年目の告白ー私が殺人犯ですー』は20万部を超えるベストセラーに。他に『宇宙にいちばん近い人』『シンマイ 』『廃校先生』『神様ドライブ』『くじら島のナミ』『貝社員 浅利軍平』などがある。お仕事(執筆、講演)の依頼は、お問い合わせ欄まで。