スプラトゥーンは面白すぎる

昔からゲームが好きでよくやっていたのだが、社会人になって時間がなくなると、ゲームをするのは断念した。

それからはゲームは家電店でちょっとプレイしたり、ゲーム雑誌で見たり、最近ではユーチュブの実況動画を見るなどという感じで接していた。僕の感覚で言えば、ゲームはヤクザの女なのだ。手を出したらやばい。遠巻きに見るだけで満足すべきだろう。

なのでスマホゲームも絶対にやらないように心に誓っていた。あれほど流行ったポケモンGOも歯を食いしばってやらなかった。

だが唯一の例外として、任天堂のゼルダだけはやっていた。ゼルダシリーズは任天堂の力が結集されたシリーズだ。これをやらないというのは、無人島で飢えに苦しんでいるところに突然出現した満漢全席をスルーするようなものだ。そんな馬鹿なことはできない。

だがどうしてもゼルダ以外にやりたいゲームが出現した。

それが『スプラトゥーン』だ。

ゲームの面白さを決定づけるのが、ルールがシンプルであることだ。

野球とサッカーで例えるが、世界規模で見るとサッカーが圧倒的に人気がある。それはサッカーのルールが『相手陣地のゴールにボールを入れる』というシンプルなものだからだ。それに比べて野球は最初に覚えなくてはならないことが多々ある。ゲームのルール作りにおいて、ルールのシンプルさが重要である証拠だ。

スプラトゥーンは簡単に言えばインクの塗り合いゲームだ。ルールは『どれだけ多くインクが塗れるか』となる。

このルールを聞いた瞬間、すごいと僕は驚愕した。ゲームやりたいレベルメーターががぐんと振り切った。

スプラトゥーンはシューティングゲームだ。武器で相手を撃ったり、攻撃したりするゲームとなる。

シューティングゲームは銃で敵を撃つというアクションがどうしても残酷なものとなる。以前に比べると血が出たりする描写がなくなっているが、どうしてもその悪い印象は拭えない。

任天堂は子供を大切にするメーカーとしても知られている。だから任天堂からこの手のゲームはでないだろうと思っていたが、そこでスプラトゥーンが出たのだ。

銃は弾丸を撃つのではない、インクを放つのだ。この表現で残酷さが消える。かつシューティングゲームに新しくシンプルなルールを持ち込んだ。

このアイデアはとんでもない。

シューティングゲームのマイナス様子を払拭している上に、ゲームの面白さを決定付けるシンプルさもある。

僕は、『そんな面白いものどうやって作ったかを知って、それを事細かに分析する』というわけのわからない趣味を持っている。

早速スプラトゥーンの開発秘話を調べた。

任天堂にはマリオとゼルダという超人気シリーズがある。これは他のメーカーからすると喉から手が出るほど欲しいものだが弱点もある。この人気シリーズに力を注ぐあまり、マリオとゼルダにかわる新しいものが出にくいということだ。

そこで任天堂の若手チームが結集し、新しいソフトを作ることになった。50ほどのアイデアが出され、勝ち残ったのが、『豆腐みたいなものがインクを吐いて塗り合うゲーム』だった。

スプラトゥーンはイカのキャラクターのゲームだが、最初は豆腐だったのだ。そこから紆余曲折があり、イカになったらしい。

なるほど、なるほど。インクの塗り合いというアイデアは、シューティングゲームのマイナス点を拭うために出されたアイデアではないのだ。

おそらくこういうシンプルなアイデアというのは、マイナス要素を克服するという出発点からは出にくいのかもしれない。一つ勉強になった。

それを知ってますますスプラトゥーンをやりたくなった。だがそこでじっと堪えた。なんせやらなければならない原稿が山積みだ。

ところが畳み掛けるように、任天堂はswitchという新しい家庭用ゲーム機を発売し、スプラトゥーンの続編であるスプラトゥーン2が発売された。

新型ゲーム機にスプラトゥーンの続編というダブルパンチはさすがに堪えられない。すぐさまその二つを買って、スプラトゥーンをやることにした。

 

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作家です。放送作家もやってました。第5回ポプラ社小説大賞特別賞を受賞し、『アゲイン』でデビュー。『22年目の告白ー私が殺人犯ですー』は20万部を超えるベストセラーに。他に『宇宙にいちばん近い人』『シンマイ 』『廃校先生』『神様ドライブ』『くじら島のナミ』『貝社員 浅利軍平』などがある。お仕事(執筆、講演)の依頼は、お問い合わせ欄まで。