『さよなら!アローン会』について

NHKで『さよなら!アローン会』という番組をやっていた。

アローン会とは芸人の今田耕司さん、岡村隆史さん、徳井義実さん、そして又吉直樹さんで結成された、独身芸人の会だ。

なぜ彼らが結婚できないのかを掘り下げ、とても面白かった。

アローン会の方々は結婚できないということなのだが、みなさんスターだ。お金も名声もあるのだから、彼らと結婚したい女性は山ほどいる。他のお金も何もない40代、50代の男性とはまた話が異なる。

つまり結婚願望もあり、結婚することは可能だが結婚できないという状態なのだ。

番組ではそこまで掘り下げていなかったが、やはりみなさんが芸能界、テレビの世界にいるということが大きな要因だと思う。

僕は放送作家をやっていたので、芸人さんとは近い世界にいた。職業的な近さでいえば、業界人ー放送作家ー芸人という感じだ。

この世界に共通する感覚として、『学園祭が一年中続いている』というのがある。

舞台や番組制作というのは、学園祭に似ている。あの興奮や高揚感が一年中味わえるのが芸能界というものだ。

だからよほど結婚願望がなければ、結婚しようという気になれない。あの世界では寂しさを感じることがほぼないからだ。何せ祭りが切れ目なく続いているのだから。

僕も20代はそんな感じで過ごしていたのだが、ある日20代後半になって、30代後半、40代の独身の先輩を見てはっとした。

みんな老けていたのだ……。

そうか、学園祭は永遠に続くけど、やってる人の時間が止まってるわけじゃないんだなとしみじみ感じた。

それと芸人さんと放送作家の違いというのもあった。

芸人さんとは生き様だ。辛い経験や悲惨なことも笑いに変える職業だ。独身でいるというのも笑いに繋がるし、それが今回のアローン会番組のように仕事になる。

だが芸人さんは表方で、放送作家は裏方だ。自分の人生をネタにしても、業界の人を面白がらせるだけだ。リスクの割にメリットがあまりにも少ない。似たような職業だが、やはりそこには明確な差がある。

そんなときに幸い妻に出会ったのですぐに結婚し、子供も二人生まれた。あのとき結婚していなかったら、アローン作家になっていただろう。

年をとっての男性の独身というのは、悲壮感もあるが滑稽さもある。このアローン会の番組は、年に一回ほど継続して欲しい。中には結婚されたり、独身のままでいる人もいるだろう。そのとき感じる変化をしゃべって欲しい。四人のみなさんの人生の変遷が楽しみだ。

 

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作家です。放送作家もやってました。第5回ポプラ社小説大賞特別賞を受賞し、『アゲイン』でデビュー。『22年目の告白ー私が殺人犯ですー』は20万部を超えるベストセラーに。他に『宇宙にいちばん近い人』『シンマイ 』『廃校先生』『神様ドライブ』『くじら島のナミ』『貝社員 浅利軍平』などがある。お仕事(執筆、講演)の依頼は、お問い合わせ欄まで。