文章は手で書くから口で書く時代2 ーキーボード入力から音声入力にー

まず音声入力をしてみての感想は、想像以上に使えるということだ。音声入力をするときのみなさんの最大の懸念が、誤変換が多いのではないかということだろう。

もちろんある。ただあるにはあるが、それは想像していたほどではなかった。誤変換を減らすコツもあり、短い文よりも、長い文を読んだ方が誤変換が少なくなる。文脈で解釈してくれるからだ。

さらに発音をしっかりする。誤変換が多い時はコンピューターの問題ではなく、こちらの発音に問題があることが多い。だからきっちりと発音してやれば、誤変換は少なくなる。

今僕が執筆してる時のやり方はこうだ。テキストは Google ドキュメントで全部書く。これが便利なのは、スマホとパソコンで同期しているからだ。スマホの音声入力でざっと読み上げ、それをパソコンの Google ドキュメント上でキーボード入力でなおす。

音声入力のメリットは、とにかく疲れないということだ

普段僕が小説を執筆するときは、8時間以上はやっている。長い時は半日ぐらいやる。放送作家時代に長時間執筆するのはドラマの脚本ぐらいだったので、さほど意識はしてなかったのだが、長時間の執筆作業はとにかく疲れる。それも一冊書き上げるには、最低でも一ヶ月ぐらいはいる。連日それほど執筆すると、疲れがどんどんたまっていく。

執筆するときは、頭が疲れるというよりかは、 体から疲れが出始める。

まずは目だ。ずっとモニターを見続けているので、とにかく目が疲れる。それを阻止するために、ブルーライトカットのメガネなどをかけたり、プロボクサー並みに眼筋の運動しているが、それでも疲れるものは疲れる。

そして長時間椅子に座り続けることも疲労がたまる要因だ。特に腰の負担はすごい。それをどうにかするため、僕は毎日腹筋と背筋の運動を欠かさずやっている。高校の柔道部ぐらいの回数をこなしている。たまにその運動を忘れたりすると、翌日は腰に痛みが走る。相当の負担がかかっているということだ。

デスクワークの人間は寿命が縮まるというデータもある。最近では、スタンディングデスクというものも流行っている 。立ちながら作業をするための机だ。アニメスタジオのピクサーなどでは、みんなこのスタンディングディスクで作業をしていた。それだけ座りながらの作業は疲れるということだ。

このキーボード入力での疲れを、音声入力は軽減できる。まず話しながら書くので、画面をずっと見つめる必要はない。極端なことを言えば、寝ながらでも文章が書ける。これで目の疲れは激減する。

さらに座る必要もない。スマホを片手に部屋を歩きながら執筆ができるのだ。これは健康上すごくいい。さらに足を動かしていると、脳がより働くそうだ。いつもよりもスラスラと言葉が出てくる気がする。外でも可能だろう。ただ一人でぶつぶつ話しながら歩いていると、不審者扱いされるかもしれないが……。

おそらく音声入力の最大の利点は、この疲れがないということだと思う。特に長時間執筆する人ほどそのメリットを享受できる。以前僕はブログをやっていたのだが、小説家になってからブログを続けられなくなった。毎日小説を書いているととにかく疲れる。だからブログを書く余力がなかったのだ。だが音声入力ならば、執筆時の負担が軽減できる。おかげでブログが書けるようになった。

ただやはり難点はある。まず最初にやるにあたって、口から言葉が出てこない。思ったことをスラスラと言葉にするというのは、慣れていなければかなり難しい。

キーボード入力が慣れている人ほどできないかもしれない。頭の中で浮かんでいる言葉を口から出すという回路が、まだ脳内で確立されていないのだ。だから、あーとか、えーとか、セクハラ問題で追及される大臣のようになる

まずこの段階で、音声入力は無理だと思う人がいるかもしれない。でもこれは慣れだ。やっているうちに言葉が口から出るようになってくる。音声入力執筆実現のためには、この難関を乗り越えなくてはならない。

続けて、やはり誤変換が完全になくなることはない。だから最終的にはパソコンのモニター上で、キーボード入力で文章をなおさなければなさない。 Google ドキュメント ならば、キーボードと音声入力を併用しながらなおすことができる。シフト、コマンド、Sを押せば、ショートカットキーで音声入力になるので、これを使うとなめらかに修正することができる。

あと、すでにキーボード操作で早く打てる人にとっては、そこまで時間短縮にはならないかもしれない。音声入力の入力自体は早いのだが、この誤変換をなおす作業に結構な時間が取られるからだ。ただキーボードでそれほど早く打てない人にとっては、音声入力で執筆速度は上がる。

というわけで音声入力はかなり使える。もう少し経てば、誤変換も少なくなるはずだ。さらに思わぬメリットとしては、これを続けているとスピーチもうまくなるのではないだろうか。考えを口にするという脳内の回路が太くなればなるほど、おしゃべりの方もうまくなるに違いない。音声執筆での文章入力をやっていれば、自然と話術の力も上がるのだ。

これからも音声入力執筆を続けてみる。また何か発見があったらご報告させてもらいます。いつも読んでいただいてありがとうございます。

↓音声入力執筆に関しては、この本を参考にしました。

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作家です。放送作家もやってました。第5回ポプラ社小説大賞特別賞を受賞し、『アゲイン』でデビュー。『22年目の告白ー私が殺人犯ですー』は20万部を超えるベストセラーに。他に『宇宙にいちばん近い人』『シンマイ 』『廃校先生』『神様ドライブ』『くじら島のナミ』『貝社員 浅利軍平』などがある。お仕事(執筆、講演)の依頼は、お問い合わせ欄まで。