世界初のアリクイ小説、『弟がアリを食べた日』

以前からアリクイのことが気になって気になってしかたがなかった。

まずアリクイと言う名前はなんなんだ。なぜ自分の主食であるアリが名前に含まれているのだ。しかもわざわざご丁寧に、『食い』と補足説明まで加えられている。

こんなことを言われても、「いや、わし知らんがな」とアリクイ自身は困惑するかもしれない。たしかにアリクイが自分で命名したわけではない。

ならば一体誰がこんな名前をつけたのだ。一度アリクイの名付け親と膝をつき合わせて尋ねたいものだ。

そしてアリクイの外観もおかしい。あの顎の長さはなんだろうか。姿かたちも独特で、他に類推する生き物が思い浮かばない。舌の長さも変だ。さらにその長い舌で食べるものが、あの小さなアリなのだ。アリを食べやすいように進化し、舌が長くなったんだろうが、その進化をもっと別の方向に使えなかったのだろうか。

しかもアリクイのしょんべんは異常に臭いそうだ。なんだその特徴は……。

名前、外見、さらには排泄物が臭いという意味のわからないオプション。独特を超えすぎて大気圏に突入した生物。それがアリクイなのだ。

これほどアリクイに心惹かれるのだ。ならばアリクイを主人公した小説を書くべきだろう。そう思い、どんな話にするか考えはじめた。すぐに思い浮かんだのが、アメリカのドラマである『フレンズ』だ。

フレンズはシットコムと呼ばれるシチュエーションコメディーだ。NHK教育テレビなどでよくやっている。収録の際に観客を中に入れるので、ドラマ内で客の笑い声が聞こえる。日本にはないタイプのドラマだ。

シットコムの特徴のひとつに、登場人物が成長しないということがある。 もしくは成長のスピードが他のドラマに比べていちじるしく遅い。

このアリクイをシットコムのような小説にできないだろうか。そう思い、奇妙な兄弟が頭に浮かんだ。弟は容姿端麗だが、 兄は冴えない童貞高校生だ。兄はモテたくてモテたくてしかたない。日々妄想と格闘している。そんな兄に対して、弟はモテてモテてしかたない。兄は『ひかり』、弟は『さくら』だ。

そんなさくらがある日、アリを食べたことでアリクイへと変身する。そして二人は、アリクイと人が共存する、アリクイ島にいつの間にかワープしていた。そんなストーリーだ。

ひかりとさくらとアリクイたちとの暮らしを面白おかしく描く。そう閃き、暇つぶしで独り笑いながら書いていた。

楽しみながら書くという意味では、この小説が一番楽しみながら書いている。自分の楽しみのために書いていたが、せっかくなのでnoteで公開してみることにした。正直僕のこれまでの作品のように、感動の要素は一切ゼロだ。ただただ面白い。そんな小説になってます。よかったら一度読んでみてください。

↓こちらから読めます。

弟がアリを食べた日1ーようこそアマアリ島ー

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作家です。放送作家もやってました。第5回ポプラ社小説大賞特別賞を受賞し、『アゲイン』でデビュー。『22年目の告白ー私が殺人犯ですー』は20万部を超えるベストセラーに。他に『宇宙にいちばん近い人』『シンマイ 』『廃校先生』『神様ドライブ』『くじら島のナミ』『貝社員 浅利軍平』などがある。お仕事(執筆、講演)の依頼は、お問い合わせ欄まで。