上手な負け顔の魅せ方

志摩スペイン村が「並ばないから乗り放題」と自虐PRで成功しているそうだ。

関西のテーマパークでは現在ユニバーサルスタジオジャパン(USJ)が一強だ。その規模の大きさはまさにグローバルで、普通に挑めば負けは目に見えている。そこで枚方パークや志摩スペイン村は、あの手この手で最強の王者であるUSJで挑んでいる。その一つがこの自虐PRなのだろう。

自虐はこれまで好意的にとらえられる行為ではなかったが、最近はそういう空気がなくなっている。

自虐とは、要は自分をさらけ出しているとも言い換えられ、自分が隠したい部分を見せるということでもある。

こうすることで「応援してやろうか」と周囲の人が思ってくれる。

これは、『負け顔を見せる』という言い方もできる

プライドの高い人間というのは、負け顔を見せられない。成功していない状態でも見栄を張り、虚飾で飾り立てる。これでは人は応援しようがないし、そのかもし出す空気が周りに伝わりより倦厭される。エリートと呼ばれる人はこの傾向が強いかもしれない。

ところが負け顔を見せられる人間は、恥を捨ててうまくいかない状況そのものを公にさらけ出せる。そうすることで応援してもらえることをよく知っているのだ。

この負け顔を見せる達人が、芸人さんだろう。

近頃芸人さんがコメンテーターになることが多い。時事問題について各自意見を述べているが、これは、『偉そうだな』と視聴者から嫌悪される危険性もはらんでいる。

だが他の番組では、体を張った笑いをとったりしている。カンニングの竹山さんはまさにそうだ。コメンテーターとしての意見を述べる一方、有吉さんやザキヤマさんにけちょんけちょんにやられている。これはまさに負け顔だ。こうしてバランスを保っているからこそ、竹山さんは一線で活躍し続けられているのだ。

芸人さんでも負け顔を見せることが苦手な人は、いまいち伸び悩んでいる気がする。芸人さんだけでなく、負け顔を見せるというのは、現代では必須の技術となりつつある。

『上手な負け顔の魅せ方』

なんか新書で一冊書けそうだ。

 

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作家です。放送作家もやってました。第5回ポプラ社小説大賞特別賞を受賞し、『アゲイン』でデビュー。『22年目の告白ー私が殺人犯ですー』は20万部を超えるベストセラーに。他に『宇宙にいちばん近い人』『シンマイ 』『廃校先生』『神様ドライブ』『くじら島のナミ』『貝社員 浅利軍平』などがある。お仕事(執筆、講演)の依頼は、お問い合わせ欄まで。