『ボクらと少年ジャンプの50年』について 1

先日、 NHK BS のドキュメンタリーで『ボクらと少年ジャンプの50年史』という番組をやっていた。

少年ジャンプが創刊50周年を迎えるということで、 その歴史を振り返るという内容だった。大人気を博した漫画家さんや編集者の方々に、その漫画が誕生した背景をインタビューしたり、新人漫画家が連載を勝ち取るための裏側を密着していたりと大変興味深い内容だった。

もちろん僕も、少年ジャンプを愛読している。小学生の頃から今も読んでいるので、かれこれ30年以上は読んでいる。そう考えるととんでもない漫画誌だ。

少年ジャンプは、創刊当時は後発組の漫画誌だった。 人気漫画家たちは他の雑誌に取られていて、ジャンプでは描いてくれない。

ならば残っている道はひとつしかない。それは新人漫画家を発掘することだ。そこでジャンプは、無名の新人漫画家を積極的に使った。

ただなんの実績もない新人の誰が売れるかなんて正直わからない。連載を続行するか、 終了するか。それを直接読者に聞いてしまおう。そこで生まれたのが、読者アンケートだ。

ジャンプでは読者から送られてくるアンケートで、 毎週その漫画の人気をランキングする。その結果によって、連載が続けられるかどうかを判断するのだ。

これはテレビの視聴率みたいなものだ。ただテレビの視聴率は、数字が悪くてもスポンサーやタレント事務所との関係性、使っているタレントの力の強さなどで、なぜか続いている番組があったりする。どこかブラックボックスの中にある。

視聴率が悪くても、面白い番組はある。そういう意見が作り手側から発せられる。たしかにそうかもしれないのだが、視聴者としては少々わかりにくい。

だがジャンプはそこが違う。どんな人気作家であろうが、ランキングが悪ければ連載を打ち切る。 そこがわかりやすい。

ある成功した組織が低迷するのが、新陳代謝が起こらないことが理由の一つだ。 10年20年経っても、上層部の面々が一向に変わらない。日本中のあらゆる組織で起こっている現象だ。そして新陳代謝が起こらない組織というのは、ゆるやかに死んでいく。

どう新陳代謝を起こすか? これほど難しい命題はない。

だがジャンプというのは、アンケート主義という強制ルールを設けることで、この命題をいとも簡単にクリアしている。

「なんで俺の漫画が打ち切りなんだ」と大御所漫画家がブチギレたとしても、「ランキングが悪いので」と編集者が一言いえば、どんな作家でもぐうの音も出ない。

そういう意味でいうと、単純明快でわかりやすい評価システムを最初に作り、それを遵守するということは大変重要なことなのかもしれない。

 

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作家です。放送作家もやってました。第5回ポプラ社小説大賞特別賞を受賞し、『アゲイン』でデビュー。『22年目の告白ー私が殺人犯ですー』は20万部を超えるベストセラーに。他に『宇宙にいちばん近い人』『シンマイ 』『廃校先生』『神様ドライブ』『くじら島のナミ』『貝社員 浅利軍平』などがある。お仕事(執筆、講演)の依頼は、お問い合わせ欄まで。