ホリエモンのいらないものは、作家にとっての宝物

ツイッターでこんな記事が流れてきた。

人生の四大コストである家族・家・自動車・結婚をカットすれば、1、7億円節約できるということらしい。

堀江さんの発言みたいだけど、実に堀江さんらしい言い回しだ。批判を恐れず極論を言うことで、世の中の人の常識を揺らしている。そこであらためて、人々はいろんなことを考えることができる。いわゆる湖面に投げられた石のような役割を果たしている。

僕は以前から堀江さんの発言に着目している。別に堀江さんの意見に賛同しているというわけではなく、堀江さんがこれからの時代にいらないと言っていることに興味があるのだ。

というのも、堀江さんがいらないと言っているものは、ドラマの要素になりやすいものばかりだからだ。家族はホームドラマで、結婚はラブドラマで重要な要素だ。そういえば現在ヒットしている是枝監督の映画『万引き家族』も家族がテーマですね。

池井戸潤さんの小説で『下町ロケット』という代表的なものがある。

下町の町工場が奮闘する物語だ。なぜこの物語が人気があるかというと、町工場というものが現在下火になっているからだ。

これが一部上場の大企業がロケットを作る話ならば誰も興味持たない。物語に必要な、障害や壁というものが存在しないからだ。 膨大な資金と優秀な技術者を使って、ロケットを開発するドラマ。 作家としてこれほど作りにくいものはない。面白くもなんともない。

つまり物語とは、マイナスからプラスに転じることで生まれる。町工場がどんどん消えてゆく現状があり、この流れが止められないことをうすうすみんな知ってる。だからこそ下町ロケットの登場人物が苦境を乗り越えていく姿を、読者は応援したいと思う。

つまり現在下火で、将来なくなりつつあるものは物語にしやすい。堀江さんの言うように、これから家族や結婚というものが崩壊していくと、人々が今なんとなく思っている。だから堀江さんの発言にみんな過剰に反応する。そういう状況があるからこそ、『万引き家族』のような家族をテーマにした映画がヒットしているのかもしれない。

僕は『廃校先生』という廃校寸前の学校を舞台にした小説を書いた。

今、インターネットのおかげで、遠隔授業が可能だ。予備校などでは、当たり前のようにやっている。

コストカットをしたいのならば、全国の学校や教師を減らしてネットで授業をすればいい。 現にそういう方向に向かいつつある。

じゃあ教師や学校というものは、これからの時代に必要ないのだろうか? すべてネットで代換可能なのだろうか? そんなことを考えていて、学校ものを書きたいと思った。つまり、堀江さんのような人がいらないと言ったものから、小説が一つ作れたのだ。

家や車がいらない流れがあるのならば、マイホームやマイカーをテーマにした小説が作れるかもしれない。うん、いけるな。面白そう。

これからも堀江発言は注目です。

 

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作家です。放送作家もやってました。第5回ポプラ社小説大賞特別賞を受賞し、『アゲイン』でデビュー。『22年目の告白ー私が殺人犯ですー』は20万部を超えるベストセラーに。他に『宇宙にいちばん近い人』『シンマイ 』『廃校先生』『神様ドライブ』『くじら島のナミ』『貝社員 浅利軍平』などがある。お仕事(執筆、講演)の依頼は、お問い合わせ欄まで。